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2. 果実の肥大化を決定づける細胞分裂期
果実の成長には、細胞分裂期細胞肥大期の明確な2つのフェーズがあります。
特に細胞分裂期は、最終的な果実の大きさの最大キャパシティを決定づける最も重要な時期です。

2-1. 開花直前の細胞分裂(ピーク期)
開花直前のつぼみが膨らむタイミングが、細胞分裂が最も活発に行われるクライマックスです。

• 生理学的役割: 将来イチゴの可食部になる果床(花の中心にある花軸の土台部分)の細胞分裂がこの段階でピークを迎え、全体(最終的な細胞数)の約70%から80%がここで形成されます。

• 品質への直結: この時期に形成される細胞数が、その後の果実肥大の最大キャパシティをほぼ決定づけます。

• 栄養管理の鍵:
    ◦ カルシウム (Ca): 細胞同士をつなぐ接着剤として働き、細胞壁を強化します。

この時期にカルシウムが不足すると、細胞壁の強度が足りなくなり、後に
デカや軟弱化の原因となります。
    ◦ ホウ素 (B): 細胞壁の安定化や、花粉の成熟・活性維持に関わります。
    ◦ 植物ホルモン: サイトカイニンがDNA複製スイッチを入れ分裂を促進し、オーキシンがその働きを補助することで、細胞分裂の勢いを後押しします。

2-2. 受粉直後の追加細胞分裂
受粉, 受精を終えた直後、約1週間程度、追加の細胞分裂が再開されます。

• 生理学的役割: この短い期間で、残りの約20%から30%の細胞が形成されますが、開花前の分裂不良を完全に挽回することは困難です。

• 受精の成功: イチゴの赤い部分は、植物生理学上の果実(相果)ではなく、果床(かしょう)が肥大したものです。

果床が、均一に膨らむためには、表面の小さな粒(相果)の一つ一つがきちんと受精し、そこから放出される
オーキシンやジベレリンといった成長ホルモンが周囲の果床組織に信号を送ることが不可欠です。

受精に失敗すると、ホルモン分泌が不十分になり、
奇形化が発生します。

3. サイズと糖度を決定づける細胞肥大期
細胞分裂が落ち着くと、果実は細胞肥大期へと移行します。
この期間は約2週間続きます。

• 生理学的役割: 各細胞が水分や糖分を取り込み、大きく膨らむ段階です。
果実の大きさは、作られた細胞の数と、その細胞をどれだけ大きくできたかで決まります。

• 肥大のメカニズム:
    1. 浸透圧の利用: カリウムイオンと糖を細胞内に溜めることで浸透圧を上げ、膨圧によって細胞を膨らませます。
    2. 細胞壁の伸展: オーキシンが細胞壁を酸性化し、細胞壁を一時的に伸びやすくする酵素(エキスパンシンなど)が働くことで肥大が促進されます。

• 栄養管理の鍵:
    ◦ カリウム (K): 浸透圧調整と、光合成産物(糖分)の細胞への転流を最大化する駆動力が役割です。
    ◦ ホウ素 (B): 糖と水分の転流が円滑に進むための構造的基盤を提供します。

4. 高品質な果実を導く総合管理
これらの生理プロセスを円滑に進めるためには、環境と栄養の「時間差管理」が重要です。

• 光合成の最大化: 日中の光, 二酸化炭素(CO2)、気温を整えて光合成を最大化し、高合生産物(糖など)を貯蔵することが、細胞分裂のスピード向上と果実肥大に不可欠です。
CO2濃度を700〜1000 ppm程度に維持することが推奨されています。

• 栄養成長と生殖成長の同時進行: 昼は光合成を中心に果実の肥大を後押しし、夜は低温(5°C~10°C)で第2房の花芽分化を誘導するなど、昼と夜で異なるスイッチを使い分ける管理が求められます。

• カルシウムの転流: カルシウムは、蒸散でしか運ばれず、果実が肥大期に入ると導管が機能しなくなるため、開花前と受粉後約2週間以内に適切な水分管理と葉面散布によって、確実に花(果床)に届けることが、硬さや劣化防止の「命綱」となります。
イチゴの生理プロセスは、まるで建築物の設計と建設に似ています。
まず花芽誘導期(秋)に建物の「設計図」が作られ、開花前後の細胞分裂期に「基礎となる部屋の数(細胞数)」が決定します。
そして細胞肥大期に「部屋を大きくし、内装(糖度)を充実させる」作業が行われます。
特に、基礎工事の段階(開花前後の細胞分裂期)でのカルシウムや微量要素の不足は、その後の品質や最大サイズを永続的に制限してしまうため、適切な時期に適切な栄養を供給することが、収量と品質を最大化する鍵となります。

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